倶知安処分場

倶知安処分場

工事名倶知安最終産業廃棄物処分場造成工事
発 注 者ニセコ運輸㈲
工  期2002/10/01~2003/10/31

概 要

土工144,000m3、敷地20000m2
排水施設一式、雨水排水施設一式
地下集水設備一式、浸出水排水設備一式
取付道路、河川改修工

取材班菅 順司・藤田 真一・安原 博之

この倶知安処理場は、産業廃棄物最終処分の管理型処分場を建設する工事です。
管理型処分場というのは、プラスチック等の安定型5品目をただ埋める安定型処分場とは違い、安定型5品目以外の汚泥や動植物残さなど、残りかす以外はそのほとんどが自然に分解されるものを対象にしています。
3割ほどになるまで分解されるとして、容量の約3倍は入る計算になるそうです。
発注者のニセコ運輸さんでは、この管理型最終処分場以外にも、当社で施工した中間処理場の他、琴平リサイクルセンターと、大変大規模なリサイクル事業を展開しています。
これだけのリサイクル事業に係るのは、当社として初めてといえるでしょう。

この処分場ですが、敷地2万m2、容量約14万m3という大変大きな処分場で、すぐ両脇に沢がありその部分に盛土しているため、ひょうたん型のような形をしています。
この工事では、40㎝ほど硬化剤で地盤改良して砂利を敷き、さらに舗装、その上に遮水、遮光シートなど5重にシートを張るという、土壌を完全防護する対策を取っています。
また、倶知安は去年総雪量13mを記録するほどの雪の多い所なので、雪の重さで上の遮光シートがずれないように、紐状にして継ぎ目を結んでさらに生コンで補強するといった念の入れ様です。

排水についても、雨水や廃棄物から出た油分などはすべてポンプで池に集められ、浄化施設で浄化された後、
川に流す仕組みになっていて、さらに水質や水位を常時チェックできるように上流と下流で観測用の井戸も掘ることになっているそうです。
全ての部分において念には念を入れた構造になっていて、現場職員の方たちも通常の工事より大変気をくばっているようでした。
この処分場工事が進められているすぐ隣には、既存のリサイクル施設があります。
ここには、コンクリートやアスファルト、建築廃材などに区分けして積上げられていて、それらをまた原料や製品などに中間処理するため、選別・破砕する作業等が行われていました。

また、1日最高でダンプ200台以上の廃材の受け入れが可能で、平均で100台弱にもなるそうです。取材中も廃材を積んだダンプが目の前を通りました。
実際にコンクリートの破砕作業をしている所では、コンクリートから鉄筋などをとりのぞいたり、ふるいにかけて土砂を落としたりして、破砕機にかける作業が行われていて、
破砕されたコンクリートはサイズごとにわけて積み上げられていました。

また、廃材をチップにして炭にする所では、木材と比重の重い廃材とに分類するため、一度溜め池に浸けて洗い作業を行い不純物は沈殿させ、約50℃で3日間かけて乾かします。
その後、人力と機械でさらに釘などを取り除き、チップ化して炭化装置にかけて炭にします。1時間で約0.1m3を炭にできるそうです。
その炭を固めるために廃棄したでんぷんと混ぜて、四角いレジャー炭に成形します。1時間で5~6㎏を成形できるそうで、パッケージされて「ぼくたんくん」という商品として販売されています。
火の付きも早く、火力も普通の炭と変わらないので、当社のビールパーティーで使用したときも好評でした。

チップを炭化する機械

外国製の大型破砕機

さらにもう一つのリサイクル施設である、琴平リサイクルセンターも見学させていただきました。
まず入口のすぐ目の前には、伐根材等の処理施設があって、根、幹、枝などに細かく区分けされた木材がたくさん並んでいました。
それらの木材を外国製の大型破砕機で破砕して、機械で木材についた土砂や石ころなどの不純物を取り除き、用途ごとにチップ化します。
チップにしたものを寝かせたあとは堆肥や家畜の敷き料などにされるそうです。

その手前の大きな敷地内には、ペットボトルやプラスチック、生ゴミ等をリサイクルする一般廃棄物中間処理施設があります。
そこでは発注者でもあるニセコ運輸の古谷社長自ら取材にご協力していただきました。
「最近は一般廃棄物を民間に委託する流れもあって、これからは産業廃棄物から一般廃棄物がターゲットになります。」とおっしゃるとおり、大変本格的な施設が並んでいました。

ニセコ運輸の古谷社長

取材中も、ペットボトルや廃プラスチックを圧縮梱包する機械や、発泡スチロールを溶かして再び原料にする機械が実際に稼働していて、
機械の大きな駆動音とたくさんのゴミの中、職員の方たちが一生懸命作業していました。
処理された発泡スチロール原料ですが、これは1t当たり3千円ほどになるそうです。

その隣には、スチール缶やアルミ缶を洗浄・圧縮する機械や、ペットボトルを洗浄・破砕する機械など、
許可申請中ということで稼働はしていませんでしたが、許可がおりればいつでも稼働できる万全の状態になっていました。

さらに、生ごみや動植物性残さやなどを堆肥化する大型施設もあり、JRタワーにはこのタイプの施設を縮小したものが設置されているのだそうです。
そこでできた一次堆肥は、すぐ側の大型発酵堆肥場で二次堆肥になるまで寝かせておくそうです。
他にも建設残土置場や炭焼場もあって、施設の規模の大きさと様々な機械が揃えられている充実ぶりには取材陣一同関心するばかりでした。

廃プラスチックを破砕する機械

センター長の和島さん

生ゴミを堆肥化する機械

担当所長の志田さん(右)と川嶋さん(左)

剱持さん(左)と研修生の丸山さん(右)

しかし、これだけの施設を構えていても、リサイクルの現状はまだ問題点も多く、「処理された廃プラスチックなどの原料は、処理機械のメーカーに引き取られ、中国へ輸出されている。
日本のような資源の無い国が、リサイクルされた燃料を中国に送って、中国はそれを燃料に普通のボイラーで燃やす。結局その煙が日本にきて酸性雨を降らせている。
それが今のリサイクルの現状。本当にこんなことでいいのか。」と日本のリサイクルの甘さを指摘していました。

「堆肥の問題にしても、農家の人が実際に堆肥を入れる経費や手間を考えると机上の計算通りというわけにはいかない。作っても売れないのでは、どこに保存しておくのかということにもなる。
官民一体となって問題に取り組んでいかないと。」と現状は厳しいものがあるようです。

しかし、「製品が売れなくなるとか受け入れ先とかリスクはあっても、業として会社として、管理型処分場をキーポイントにリサイクル事業はどんどん展開していく。
個人の考えとしては、北海道のリサイクル技術は進んだものを持っているから、北海道を日本のリサイクル工場にしてもいいんじゃないかとも考えている。」と、
リサイクルに真剣に取り組む姿勢と、情熱あふれる思いには並々ならぬものがあると感じました。

当社としてもこれからリサイクル施設を手がけることが増えてくれば、ニセコ運輸さん共々リサイクル事業を中心としてさらに活躍できるのでは、と思います。

取材にご協力していただいた現場の皆さん、そしてニセコ運輸の古谷社長、センター長の和島さん、お忙しい中ありがとうございました。